連載 母と子のこころの相談室から・2
育児不安の背後に—世代間伝達を防ぐために
田中 千穂子
1
1花クリニック精神神経科
pp.1134-1137
発行日 1990年12月10日
Published Date 1990/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900171
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訴えの背後にあるもの
私の勤務するクリニックには,よく子育てに対する漠然とした不安を抱えた母親が相談にみえます。子どもに何らかの症状があって来院される場合もありますが,一見,子どもにはあまり問題が感じられない場合も多いのです。そしてこのような母親たちは子育てに関し,「何かうまくいっていない」という思いを強くもっていますが,その思いをうまく説明できないという点が共通しています。
一般的に母親自身がひどい抑うつ状態であるとか,重篤な精神病理をもっている場合には,直ちに援助の手がさしのべられます。また,子どもが重い症状を呈している場合にも同様です。しかし問題が表面化していない場合には,このような訴えの受け皿はあまりありません。どこへいっても,「お母さん考えすぎですよ。子どもはちゃんと育っています。心配する必要はありません」と言われがちです。
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