研究
保健婦の新しい展開—保健所機能と市町村保健センターの機能連携を求めて
辻 元宏
1,2,3
1滋賀県水口保健所
2滋賀県厚生部医務予防課
3滋賀県精神保健センター開設準備室
pp.1100-1104
発行日 1989年12月10日
Published Date 1989/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207866
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はじめに
人口問題研究所の日本将来人口によると,昭和95年に総人口の23.6%,2,802万人,すなわち5人に1人が65歳以上の老人になると想定されている。65歳以上の老人全体の15〜25%程度に,なんらかの心の面のコンサルテーションが必要となり,その46%は痴呆性疾患といわれている1)。将来的にそれら疾病への保健,福祉対応についての模索が緊急行政施策として重要視され,今日の社会的中心課題となっている。
このうち保健施策は,保健福祉一体形と行政の名のもとに,将来の保健予防活動中心としての機能より,むしろ福祉優先型の機能的側面が際立ち,それゆえ保健婦活動は,稼働性のなかに沈潜し,将来的展望が意識化されない場合がある。保健福祉一体という言葉を解釈する場合には,行政が平面的,即時的に保健所,各市町村保健センター,それに福祉的社会資源を配置して,線で結べば機能するという妄想体系様の認識で老人に対応したなら,往々にして保健機能は,線のなかの稼働性量として機能する可能性がある。家族にとっては,行政との糸が引かれることで,家庭看護が必須の老人に対し「家族の負担軽減」という名のもとに,家族から切り離される。すなわち保健機関と特養ホームなどの福祉機関との連携で,より入所優先が確立されることになる。
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