昭和の初めのやまい草子
銭湯
皆本 紘志
1
1大阪府皆本医院
pp.80-84
発行日 1989年1月10日
Published Date 1989/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207685
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つまずきそうになって,さよ子は叫んだ。
「手を離しちゃ,危いよっ。三ちゃんッー!」
昭和初期。地方都市の街路は,電車通りの他は,ほとんど舗装されていなかった。凹凸不平らである。まして,お城の北側,三八が暮らしている京町から出町へかけての通りは,雨が降れば泥んこになり,天気が続けば土埃りが舞い上がる。日本中,到る所に見られる道路事情の月並みな例であった。
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