特集 保健婦の仕事を考える
第20回自治体に働く保健婦のつどい集録
基調講演
生命を守る地域づくりの課題
宮本 憲一
1
1大阪市立大学
pp.540-551
発行日 1988年7月10日
Published Date 1988/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207562
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
福祉国家からの離脱の道
いま,世界は大きな転換期に直面しています。基調報告にもありましたように,大変危険な逆流現象が現れてきています。その逆流現象のために,私たち国民がいろいろな面でいま悩まされ始めています。全体としてみれば世界は進歩の方向へ向かって動いており,こういう転換期が起こってきたのも,人類が未曾有の生産力の発展をもたらしたからといえます。この生産力の発展は,もはや国境が必要でなくなってしまうかたちで経済の発展をもたらし,これまで物をつくることに専念してきた人類が,物づくりから解放されて精神的な知的な分野へ入り込まざるをえない,そういう科学や教育の進歩が生じている転換期なのです。こういう大きな進歩の流れのなかで,現代の資本主義はこの進歩をうまく国民の健康や文化や生活の発展に結びつけることができなくなっております。
こういう逆流現象の先端を走っているのがイギリスとアメリカと日本です。イギリスのサッチャー政権,アメリカのレーガン政権,日本の中曽根・竹下政権であります。
Copyright © 1988, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.