書評
―著者 久常 節子〔国立公衛生院衛生看護学部〕―住民自身のリーダーシップ機能(健康問題にいどむ町)
瀬戸 智子
1
1日本赤十字看護大学
pp.949
発行日 1987年11月10日
Published Date 1987/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207417
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ともかくおもしろい。どのページを開いても,行間から,まさに日々生活している人々の声や表情やその活動が,ほとばしるようにあふれ出てくる。「組織,集団ってのは,本当に大きい力だと思う。自分一人の時には,自分が100%やらないと自分の行動につながっていかない,でも集団,組織になると,10%でも5%でも,たくさんあつまると100%になって,それが行動の第一歩に結びついてくる」(p.59)「次の会合が楽しみでドキドキしてなあ…」(p.22)地域ケアの中で,やれどもやれども,目の前に立ちふさがる壁に,立ち往生した経験をもつ者にとっては,まるで異次元の世界に入ってしまったような錯覚に陥る。地域住民自身の手で,次々と新しい活動が生み出され,継続性をもって発展しているからである。昭和59年に収集したデータというが,今も新鮮な輝きがある。著者は,この世界の魅力に惹きつけられ,現在も研究に取り組んでいらっしゃる。本書は,その中で,リーダーシップ機能という側面にフォーカスをあて,まとめたものである。しかし,非常に残念に思うことは,著者自身も語っているように,「話にのめりこみ,一人一人の話に感動し,とりこになってしまい」,これらの事実を客観化できていない点である。つまり,「組織活動の真髄に触れる発言が,世間話をするように気軽にとび出してくる」(p.95)ことを,「歴史の重さを感じてしまう」と受け止めるにとどまっている。
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