書評
―引地 ユリ〔横浜市立いずみ野中学校養護教諭〕 著―かげぼうしのつぶやき—ゆれる子どもの心
石井 光子
1
1東京都練馬区石神井保健所大泉保健相談所
pp.80
発行日 1987年1月10日
Published Date 1987/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207276
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遠い昔のすっかり忘れていた「ゆれる年頃」のことをふっと思い出させられる。著者が思春期の生徒たちの「うしろの思い」(隠れた本音)をじっとみつめて,語りあったこと出会ったことを紹介してくれると,私も一つ一つのドラマの中にひきこまれ,本の中で「とんがらし小僧」や「みかけだおしの仁王」,つっぱり少年や,さみしい少女に出会うことができる。いじめや性の問題,障害や病気のこと,また,親子関係,友人関係,学校の問題が本の各章ごとにうきぼりにされている。
著者が日々の出会いの中で「いのち」の尊さを伝え,生徒をかえてゆく,前むきの姿勢に感動させられる。このようにして著者の前を通りすぎていったさまざまな生徒たちとの出会いと別れをとおし,著者は「いつまでも心に残るのは自分で選んだのではないつらい人生を生きてゆかなければならない生徒たちのことです」と書いている。
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