地域リハビリ/活動報告
「老健法」の「機能訓練」事業について
大田 仁史
1
1伊豆逓信病院第二理学診療科
pp.758-761
発行日 1986年9月10日
Published Date 1986/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207206
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はじめに
「老健法」のいわゆる「機能訓練」事業が高齢者および高齢障害者を対象とし,これらの人々の機能維持向上をねらいとしたものであることはいうまでもない。しかし,同法が施行されて数年が経つにもかかわらず,一連の事業のなかで現場ではもっとも取り組みにくい印象を与えているのが実情である。これは法のなかで,地域リハビリテーションの理念や障害観・老人観についての基本的な議論が提示されていないことと同時に,事業を起こす上で最低限必要な①どのような目的のために,②だれが中心になって,③どのように行うか,という点での具体的なコンセンサスの欠除が大きな原因ではないかと思われる。
たとえば,週2回の訓練を6か月行う(その後はどうするのか)とか,本来PT,OTが行うべきなのだが同職種が不足なので保健婦が代行する(保健婦の専門的立場を無視),医療ではない(リハビリテーション医療との関連が不明),しかもリハ器機の助成をする,医師の指導で行うといったあいまいな内容は,現場を混乱させない方が不思議である。この小論は,もとより法律の是非を論ずるのが目的ではないので,同法とは無関係に東京の一保健所が地区内の障害者にかかわってきた事例報告にあわせ,その事業に参加してきた立場から,これら同法に基づく事業を始めようとされている人達や悩みつつ行っている人達に,僅かでも参考になればと,先に述べた3点に焦点をしぼり筆者の考えを述べたい。
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