地域リハビリテーションと機能訓練事業
「老健法」の「機能訓練事業」は個々人のライフスタイルを変え得るか
大田 仁史
1
Hitoshi OHTA
1
1NTT伊豆逓信病院第二理学診療科部
pp.704-707
発行日 1989年10月15日
Published Date 1989/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208041
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◆はじめに
老健法で機能訓練事業が自治体に義務づけられリハビリテーションの議論が高まったことは喜ばしい.しかし,同法が施行されて5年余を経た今日なお,現場でいささかの混乱があるのも事実である.これは法では主として手足の機能についてのみ触れられ,地域リハビリテーションの理念や現代を生きる障害者観,老人観が提示されなかったこと,したがって,何を目的に,誰が,どのように行うかという点があいまいのままスタートすることになってしまったことに原因がある.
さらに問題なのは,法文があいまいで,保健,福祉の枠組の中でとらえるには,あまりに内容が治療的意味合いが濃いものであったことである.そのためいくつかの厳しい疑義が指摘された.たとえば,①週2回の訓練を6カ月行う—その後はどうするのか,②医師の指示のもとにPT,OTが行い,同職種が少ないので保健婦が代行する—保健婦の専門的立場を無視,③医療ではない—リハビリテーション医療との関連が不明確,などである.しかも,リハビリテーション医療機器を助成するといった内容は,現場を混乱させないほうが不思議である.
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