報告
老人の自殺と家(3)—診療所からの報告,続報
青木 慎一郎
1
,
小井田 潤一
2
1町立浄法寺診療所
2岩手県立北陽病院
pp.390-393
発行日 1986年5月10日
Published Date 1986/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207163
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Ⅶ.隠居できない老人たち
1.はじめに
私は,この地区での老人の自殺の社会的背景を「内にこもった家族の解体」としてまとめてみた。自殺は独居老人よりもむしろ多くの家族がいる老人に多い。社会の変動の中でとまどう家族の様子が浮かびあがってきた。これらの大家族は外観では年寄りの世話をよくする「年寄り思い」の家族である。しかし,建物としての家の間取りの分析によってその内情をみれば,同じ家に住んでいても老人との生活を分離しようとする動きがあることも読み取れた。それは,解体してしまった方が楽なのだが「家族の絆が強く解体しきれなかった」と言えるような矛盾をはらんだ状態だった。しかも,その家の中には家族を一つのまとまりとして問題を決定していく人がいない。そのような家族の膠着状態の中に老人たちは閉じ込められ外の社会からは隔絶されていた。
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