特集 地域ケアシステムと訪問看護
地域ケアシステムの一翼をになう地域看護実習—高齢化社会にむけて
安田 美弥子
1
,
野川 とも江
1
,
内田 英子
1
1埼玉県立衛生短期大学
pp.27-46
発行日 1986年1月10日
Published Date 1986/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207106
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はじめに
厚生省が発表した「59年簡易生命表」によると,日本人の女性の平均寿命が世界で初めて80歳の大台を越え,80.18歳となった。男性の平均寿命も74.54歳で男女ともに3年連続して世界一となっている。日本人の体質,バランスのとれた食生活,戦争がなく犯罪も少ない安定した社会,世界有数の公衆衛生レベルなどから考えて,この先「当分は世界一の座を守る」とみられている1)。大変すばらしいことであり,世界に誇れることだと思う。
しかし一方では,世界に類のない速度と高齢化率の高さで迫ってくる高齢化社会に対して,社会の大変換が求められている。行政の動きをみても老人保健法の制定(昭和57年),健康保険法の改正(昭和59年),年金改正(昭和61年予定)などが次々に打ち出され,昭和40年代の「より大きな福祉,より大きな保障」から,ラジカルな変化が認められる。高齢者の自立を促し「人生80年」の社会設計が求められている。しかし,自分の周囲を見渡してみた時,2020年には65歳以上の老人が21.8%になると予測され,その約4%がねたきり老人で,また約4%が呆け老人とすれば,お年寄りを支える地域ケアシステムは整っているとはいえない。保健所,市町村で働く保健婦は16,000人余りにすぎず,今後の急増も予定されていない2)。
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