発言席
保健婦はこのままでよいのか
川元 孝久
1
1鹿児島県志布志保健所
pp.657
発行日 1983年8月10日
Published Date 1983/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662206715
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日本看護協会保健婦部会は"地域を担当する保健婦業務のあり方"委員会報告で,今日の保健婦の地域活動に反省を促している。かつて,保健婦がその活動の中で,母子保健の向上・国民病であった結核対策等に寄与した功績は大きく,また地域住民にとってもよき相談者であった。ところが,昨今の保健婦はどうであろうか。住民のための公衆衛生活動を行っていると言えるだろうか。"否"である。
保健婦は地域社会の急速な変化,住民の意識向上,複雑・多様化した住民のニード,そして情報の速さに対応できなくなっている。つまり,保健婦諸氏は過去の業績に安住して,地域に応じた・時代に即した公衆衛生活動のための自己の技術研鑚・進歩への努力を怠ったのではあるまいか。しかも,保健婦諸氏は健康のとらえ方をWHOが提唱する如く理解していても,その内容が地域により,時代により,質的に変容するものであることに気づいていないのではないか。また,保健婦の公衆衛生活動にしても,社会構造・人口構造の変化により,地域住民のニードは複雑・多様化し,ライフサイクルを考慮した地域活動が要求されてきている。この複雑・多様化している地域住民のニードへの対応の遅れが,保健婦の公衆衛生活動,ひいては保健所の地盤沈下に繋がったと言っても過言ではあるまい。
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