連載 聖路加の公衆衛生看護部●訪問看護活動を中心とした歩み・1【新連載】
初期の訪問活動(大正14年〜昭和10年)—公衆衛生活動発足当時から,東京市特別衛生地区京橋保健館の設立まで
松下 和子
1
1聖路加国際病院公衆衛生看護部
pp.31-36
発行日 1977年1月10日
Published Date 1977/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205793
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はじめに
近頃"訪問看護"ということがクローズアップされ,話題を呼んでいる。在宅ねたきり老人や慢性疾患患者の増加などでその必要性が高まっていることがその一つの要因であろう。私共の病院では50有余年の昔から訪問看護活動がつづけられている。このたび,医学書院から当部の歴史を,その中で,特に"訪問活動"にスポットを当てて眺めてみる機会を与えられた。当部の今日までの長い歴史の間には,東京市特別衛生地区京橋保健館の設立による職員の移動,第二次世界大戦の勃発,終戦,病院の接収,またその解除などさまざまの変遷や困難があった。しかし,常に病院の創立者トイスラー院長の理想とされた"治療と同時に予防にも目を向ける"という病院活動の主要目標の一端を担って,先輩諸姉のたゆまぬ努力がつづけられ今日に至っている。
この50有余年を経た今日,当部発足のいきさつや発展の過程,それぞれの業務の主旨を知ることは現在の活動をますます深く理解し,今後の進むべき方向を見定める上で大切なことではないかと思う。終戦時のあわただしい接収で,戦前の貴重な活動資料の大半を失ったが,今から数年前,可能な限りの資料をあつめ,平野みどり姉をはじめ,多くの先輩保健婦の方から活躍当時の模様を伺ったり,手記を頂いて当部の活動の歴史をまとめたことがあるので,それを土台とし,8回のシリーズを企画している。これを通して当部の訪問活動の来し方行く末を洞察できればと希っている。
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