書評
—丸森賢二 編 丸森賢二 鈴木祐司 今村嘉男 黒岩勝 川又昇 著—むし歯予防の実践
小松 五郎
1
1横浜市旭保健所
pp.76
発行日 1976年1月10日
Published Date 1976/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205677
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保健所は予防医学の実践の場所として全国を網羅し,結核や伝染病予防に威力を発揮して乳児死亡率改善の基礎をつくりました.現在でも核家族の育児に科学的な指導力を発揮していますが,むし歯の流行は阻止できませんでした.むし歯になれば歯科医師が治してくれるとか,むし歯の進行は誰も止めることはできないとか,早期発見早期治療が歯科衛生の指導方針であり,結核や伝染病予防に懸命であった保健所医師にとって,歯科医の世界は別なものでありました.
三歳児検診が義務づけられると三歳児の肉体上はあまり問題はありませんが,心理面で親子の指導を必要とする割合は10人に1人か2人でも,むし歯は5人か6人が問題となり,1人平均4本のむし歯をもっているとなれば,とても治療の対象としてこなしうる数ではありません.歯科の専門家でなくても,健康教育を受けるだけで実践できる知識と技術をもった人をできるだけ多数養成しなければならなくなりました.それには自分の生んだ子,育てた子として責任を感じている母親こそ最適任者です.しかし若い母親を納得させるためには科学に立脚した理論と技術が必要です.
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