世界の保健・医療制度/過去・現在そして未来……
英国における医療制度—3
田中 恒男
1
1東京大学医学部保健学科
pp.483-488
発行日 1974年7月10日
Published Date 1974/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205499
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医療制度の改革
1974年4月1日,NHSはその硬直した体制を建て直すため,大幅な変革がなされた。1971年5月,監察報告によるNHSの方式の改革が提案され,それに伴う改革準備から今日の方式が生み出されたのであった。先にも触れたように,NHSは多くの検討を経てプログラム化され,特に英国での在来医療の方式を尊重することに努めたのであった。しかし,NHS自身,英国医師会から多くの批判が絶えず提示され,一方家庭医と住民との間に取り交される自由診療の契約は年を追うごとに増加する一方だった。更に又,NHS自体のサービス内容も,各種医療費の増加から従来の給付内容の制限を行なわざるをえなくなっていった。
このような問題に加えて病院の整備計画は遅々として進まず,ヘルス-センター構想は医師会の賛同も得て着実に増加してきたものの,肝心の地域医師の不足に悩む結果を生んだ。医師不足の問題は既に世界的な課題となっているが,英国の場合,医療制度そのものへの不満も手伝って,1/3程度の新規医学校卒業生が毎年のように海外(殊にアメリ力)へ流出するという,極めて特殊な様相を呈してきたのであった。そしてNHSはしだいに国としてその重荷に耐えられなくなると共に,一般住民にとって不十分な医療の供給しかできなくなったのである。
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