世界の保健・医療制度/過去・現在そして未来……
英国における医療制度—2
田中 恒男
1
1東京大学医学部保健管理学
pp.411-414
発行日 1974年6月10日
Published Date 1974/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205488
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NHSの成立過程
英国でのNHS(National Health Service)法が1946年に成立し,1948年からその第1歩を踏み出したことはすでに知られる通りである。その制定に当たっては,王立委員会の勧告をはじめ各種の検討会の提案が相次ぎ,英国が苦境に立った第二次世界大戦下においてさえ,医療の社会化に関する検討が続けられていたのであった。そうして同時に,救貧法以来の国家的事業であった貧者の救済に加えて,第一次大戦下での母子保健サービスの展開,篤志病院volunteer hospitalと公立病院public hospitalとの調整など,NHS活動の準備は整えられていったし,1905年から1909年に至る王立救貧法委員会の活動を通じて,少数派報告として陽の目を見るに至らなかった社会保障の全体的枠組の中での医療の位置づけについても,しだいに再認識されるようになった。
1942年,ビバリッジ卿 W. H. Beveridgeを長とする社会保険ならびに関連諸事業についての委員会報告が提示され,それまで依存して来た認可組合制度が改めて批判され,国民的最低限national minimumとしての給付の確立の必要を説いた。
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