特集 社会医学
英国の医療保障制度下の医師
西尾 雅七
1
1京都大学
pp.618-625
発行日 1961年11月15日
Published Date 1961/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202460
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英国において「国民保健サービス法」(N. H. S. A.)が1946年に制定され,1948年7月5日故ベバン保健相の時代に施行されてより今日までの間に,この「国民保建サービス」(N. H. S.)に関する報告,あるいは論説がわが国においても数多く発表されている。近くは厚生省医務局総務課編「各国の医療保障制度」が刊行され,その中にもN. H. S. に関する詳しい記載があり,また米国の政治学者のH. Ecksteinの「The English Health Service」なる著書も「医療保障」という題名で邦訳されている。わが国の医療制度の全体が前時代的な人間関係を基盤として組み立てられているものであるだけに,はたして急激な進歩をつづけている医療を国民の健康を守る闘いに現在の医療制度の下において活用しうるや否やという点についての疑義がN. H. S. への関心を高めているのではなかろうか。先年来の医師会の医療費をめぐる抗争も病院のストライキも日本の医療制度が近代的な制度へと脱皮してゆく過程において必然的に経験しなければならないものであると筆者は考えているが,それらの抗争がはたして近代的な医療を国民の健康に結びつける合理的な制度を生み出すことに成功するか否かについては,われわれは国民とともに注視している必要があろう。
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