世界の保健 医療制度/過去・現在そして未来……
アメリカ医療の特質-1
田中 恒男
1
1東京大学医学部保健学科
pp.832-835
発行日 1973年11月10日
Published Date 1973/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205391
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はじめに
第二次世界大戦後,我が国の医療はそれまでのドイツ医療の類型を急速にアメリカ医療の類型に変えさせられたように考えられている。しかし,現実には,我が国の医療はドイツ医療の形態に極めて近似したまま今日まで経過している。戦後占領軍の医療に関する指導も,我が国の医療(特に病院医療)の形態にはいろいろな欠陥は認められるものの,我が国なりの歴史の中に定着している形態を急速に変更する事は,かえって大きな混乱を招くとして,間接的指導に終始する事となった。ただし,看護に関する限り,それとは無関係な直接指導に移行し,概念も機能も急速にアメリカのトップ-レベルにおける理論を一義的なものとした事が,今日に至っても看護の主張が医療関係者の理解の外に置かれやすい結果を生んだのであり,この点は改めて考えてみる必要がありそうである。
ところで,戦後の我が国の医療はアメリカ技術の吸収には意欲的であったが,アメリカにおける医師をはじめ医療関係者の位置づけの導入には決して意欲的とはいえなかった。というより,むしろ批判的であったとさえ考えられる。この具体的な内容については改めて述べるが,アメリカにおける医療の経営がnon-profitという名の商業化政策の本質に気づいた成果かもしれない。このような本質論は我が国では十分論じられなかった。
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