書評
『弱さの倫理学 不完全な存在である私たちについて』
向谷地 生良
1
1浦河べてるの家
pp.337
発行日 2023年7月15日
Published Date 2023/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689201154
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弱さの可能性を実感する
●「新しい力が湧き出てくる源は弱さにある」
「21世紀」を目前にした1999年に、注目すべき一冊の書物が世に送り出された。それは『21世紀へのキーワード「弱さ」 インターネット哲学アゴラ』(金子郁容・中村雄二郎 岩波書店)という本であった。
そのなかで、著者の金子・中村両氏が明らかにしたのが、社会が高度情報ネットワーク化することによって、「強いものが弱いものを保護するというやり方の行き詰まり」と、「逆に新しい力が湧き出てくる源は弱さにある」という“予言”であった。そこに必要とされるのが、「ネガティブとネガティブが合わさってポジティブになる」経験であり、そこに「弱さの強さ」の根拠と「弱さの思想」の基盤を見出そうとする視点である。
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