苦言辛言
医療と福祉を切り離さずに
石川 左門
1
1全国難病団体連絡協議会
pp.82-83
発行日 1973年2月10日
Published Date 1973/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205216
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人間不在の難病理解
患者やその家族など,難病問題の当事者たちは,難病対策に取り組む国の姿勢に少なからぬ危惧を抱いている。その第1には,国は難病対策を特定疾患対策と称し,厚生省が認定した難病疾患のみを施策の対象としており,すべての難病患者を制度的にもれなく救済する構想がないということである。特定疾患とは,厚生省公認の診断基準によって認められた難病疾患のことであるが,これはいかにも行政サイドの発想らしく,対策の予算化は実数の把握が前提であり,実数の把握は診断基準の確立が先決だという考えかたからきている。しかしながら難病患者の実数とは,対策の実施とともにしだいに顕在化してくるものであり,ましてや難病の難病たるゆえんは,むしろ診断基準の設定のむずかしさにあるわけであるから,こうした考えかたは,多くの難病患者を医療の恩恵から取り残すことになる。
第2には,こうした診断基準の有無で施策の対象を選択する考えかたが,難病対策を難病医療対策という狭義の限定をする結果となり,患者の生活面に対する福祉的配慮が欠けていることである。難病性からくる社会復帰のむずかしさや,長期の療養生活は,将来への不安,家族への気がね,生活の問題など,精神的,経済的困窮をもたらすが,患者を抱える家族の悩みもまた深刻なものがある。
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