事例報告
頭部外傷に対する労災補償請求の試み
小池 晶子
1
1大阪府立成人病センター調査課
pp.45-49
発行日 1972年4月10日
Published Date 1972/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205069
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はじめに
労災補償という問題は,とかく医療関係,ことに看護にたずさわるものにとって,関心の遠い問題と思われる。私も患者一人一人の愁訴をきき,障害程度をみ,どこまで回復するか,また,その障害をかかえながらどのくらいの動作ができるかなどということには大きな興味を抱いてきたが,労災補償は全く別世界のことのように思っていた。
しかし,後遺症を残したものの日常生活までみなければならないものにとって,患者の生計はみすごすごとができない問題である。労災補償の場合,その後遺症が業務によるものと認められれば,当人の給与によってちがうが,年間数10万円の生涯にわたる年金あるいは数10ないし数百万円の一時金が支払われ,業務外と認定されれば,労災保険からはビタ一文もらえない(ただし,本人が厚生年金に加入しており,厚生年金に定める障害等級にあてはまる後遺症を残したときは,厚生年金の障害年金が受給できる)。したがって,労災補償を適用されるかどうかは,障害を残した患者や家族にとって,その後の生計を左右する重大な問題である。
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