スポット
ある試み
小坂 英世
1
1小坂診療所
pp.62
発行日 1971年4月10日
Published Date 1971/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204908
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拙著「精神分裂病患者の社会生活指導」のなかでとりあげたC少年(彼については本欄でもとりあげている)に大学生の兄がいる。D青年としておこう。しばしば弟を往診した私とは,すでに顔なじみであった。
昨年の三島事件の翌朝,たまたま弟を往診していた私に,真顔で質問してきている。"昨日の事件に刺激されて興奮してしまった。どうしたらいいか"と。聞けば,三島作品の愛読者であったという。患者の同胞であるだけに,若しという懸念はあった。しかし興奮の程度は三島の愛読者としては当然の範囲内であったし,しかも事件が原因であると認識している。またその夕方には,学校からの帰途弟の薬をとりに私の診療所に寄ることになっているので,そこでもう一度様子を見ることができる。そういうところから大したことあるまいと考えた私は,話しあった後でクロールヂアゼポキサイド(バランス,コントール)の服用を指示して別れた。
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