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I.痴呆の治療―新しい展開
1.treatable dementiaの重要性
痴呆の治療を考える時,痴呆の概念に関する近年の趨勢に一言触れないわけにはいかない。19世紀から今世紀前半にかけての神経病,精神病学者の先達以来,痴呆という言葉は,1)非可逆性,進行性の,2)脳に器質性変化を伴なう精神機能の衰退,の意味を含めて使用されてきた。痴呆とはこのようにもともと厳密にある病態を定義する概念ではなく,かなり漠然とした臨床的通念として使われてきたと思われる。近年診断治療法の進歩により痴呆患者の中に可逆性すなわち治療可能(treatable)なものの存在が示されるにつれ,上記の漠然とした古い通念の下に行なわれてきた医療への警鐘としてtreatable(またはreversible)dementiaという言葉が頻繁に使われている。treatable dementiaに関しては最近すぐれた総説16,45,52)がいくつか出ているので参照していただきたい。とくに亀山ら45)の総説では原因疾患を17項目に整理してあり,それぞれの鑑別点とともに銘記すると便利であろう。重要なことは"痴呆は治らない"という従来の通念の下に,"痴呆"という診断を下してこと足れりとするのでなく,痴呆とは種々の原因により起こる症候群にすぎないことを認識し,つきつめた鑑別診断と不断の治療可能性を追求する努力を惜しまぬことである。
Summary
Many remarkable advances have recently been made in our understanding of senile dementia of Alzheimer type (SDAT). The role of neurotransmitters in the pathophysiology of the disease has been gradually disclosed and the new findings are now serving as a rationale for the novel approach to the drug treatment of SDAT.
In this review, three examples of such novel approaches are demonstrated and discussed; cholinomimetic agents, catecholaminergic agents and vasopressin and related peptides.
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