Medical Topics
ベトナムにおける除草剤と奇形
船崎 善三郎
1
1佐久総合病院外科
pp.54-55
発行日 1971年1月10日
Published Date 1971/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204832
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ベトナムの枯葉作戦
ベトナムで枯葉作戦として使用されている除草剤が,たんに草を枯らすだけでなく,樹木を枯死させ,動物界にも影響を及ぼし,自然循環の破壊から生態学的に大きな問題になっている。1969年6月頃,サイゴンの各新聞は,除草剤散布地域の婦人に流産が多くなり,奇形児の出生が増加していることを報じた。いよいよその影響が人間にあらわれたのである。除草剤2・4・5Tは前から催奇形性があるのではないかといわれていた。
この2・4・5Tは,2・4・5 Trichlorophenoxyacetic acidで,多年生の雑草や広葉植物を枯らすホルモン系の除草剤で,林業の下刈りなどに多く用いられている。ベトナムではオレンジという名称で,2・4Dと2・4・5Tが等量に混ぜられた枯葉剤が最も多く用いられている。この枯葉作戦の目的は,ジャングルを枯して解放戦線の待伏せ攻撃を防ぐのと,田畑を枯して食糧を断つことにある。したがって散布される量も多く,濃度もふつうに使用されるものの13倍という高濃度であるという。南ベトナムではすでに1961年から9年間に,130万ヘクタールの耕地,250万ヘクタールの森林にまかれ,1人あたり,2.6kgに及んでいるという。したがってその影響は各方面にあらわれている。
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