仕事と人生
美しい一瞬のために
藤本 エミ
pp.9
発行日 1971年1月10日
Published Date 1971/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204822
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1人でも多くの観客の方々が,たとえ一瞬間でも「美しいという瞬間」を私達の舞台に感じて下さるように……これが,私の仕事「バレエ」への目的であり,希望でもあり,すなわち"人生"そのものの姿である。美しいと感じて下さったその瞬間は,必ずやその観客の胸の中に,頭の中に,心の中にやきつけられ,その一瞬がやがては想い出に,そして遂には"永遠"になる。だから,私達はその美しい一瞬のために,全てをかけて,人生そのものをかけて生きている。つまり,永遠の美のために,私の仕事も人生もある。こういったら大げさに聞こえるかも知れないが,私の情熱が言葉をそんな風に作ってくれる。
私にとって,仕事と人生を別々にはとても考えられない。全く同じものである。バレエが私からなくなったら,つまり,私から美しさが失なわれたら私の人生も終りである。美しさを創ることができなくなり,皆さんに美しさをみてもらえなくなったら,私の仕事も人生も終りだと私は考えて少しも淋しくはない。バレエは自分で踊ることだけではなく,後輩達に教えることも,自分で創ることも可能なので,私の人生がある限り,この仕事も存在する。
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