映画の時間
一瞬でもいい.もう一度会いたい. 瞬 またたき
桜山 豊夫
pp.575
発行日 2010年7月15日
Published Date 2010/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101861
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家族や恋人など,身近な人を亡くした場合に「複雑性悲嘆」という症状が起こることがあります.いわゆる「うつ」状態を呈するものの,「うつ病」とは治療薬剤などが異なっています.自死遺族対策などでも,この複雑性悲嘆への対応が課題のひとつですが,今月ご紹介する「瞬 またたき」では,主人公がこの複雑性悲嘆の状態にあると思われ,公衆衛生的にも興味深いものがあります.
主人公・泉美(北川景子)は,生気のない生活を送っています.彼女は交通事故に遭ったようで,徐々にその事故の概要が明らかになってきます.恋人・淳一(岡田将生)の運転するバイクでツーリング中に交通事故に巻き込まれ,恋人は死亡,彼女は意識不明になりながらも一命をとりとめたのでした.身体的な傷は癒えたものの,精神的な後遺症に苦しむ主人公は,定期的に精神科のクリニックに通院しています.自分は生き残り,最愛の恋人は事故死したにもかかわらず,事故のときの記憶が欠落している主人公に対して,主治医(田口トモロウ)は無理に事故の記憶を呼びさまそうとせず,時間をかけて治療していくことを勧めます.恋人との最後の瞬間を思い出したい泉美は,クリニックで知り合った弁護士・真希子(大塚寧々)に,事件の詳細を調査してくれるように依頼します….
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