Medical Topics
SMON病
川村 佐和子
1
1東京大学医学部保健学科疫学教室
pp.58-59
発行日 1970年5月10日
Published Date 1970/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204680
- 有料閲覧
- 文献概要
SMONの病名はその特徴的症状すなわち亜急性,脊髄,視神経,末梢神経症—Subacute Myelo-Optico-Neuropathyの頭文字をとったものである。多くの場合これら神経系の症状が発現する前後に激しい不痢,便秘,腹痛などの腹部症状をみる。そのため"腹部症状を伴う脳脊髄炎症"などの別名もある。
神経症状は足底のしびれから始まり左右対称的に上行する。ほとんど臍部以下で止まるが時には手掌部のしびれがみられることもある。しびれはさらにSMON特有の表現に示される異常知覚となる。「足首に鉄の輪をはめている感じ」「脛に鉄の棒をうちこまれている感じ」「足の裏にゴムやスポンジをつけている感じ」「砂利道を歩いている感じ」「剣山の上を歩いているような,さすような痛み」等々。下肢の冷え感も強く,実際の皮膚温低下以上に著しい訴えもみられ,夏期であっても足温器を用いている例もある。これらの異常知覚と共に麻痺も起こり,完全麻痺となることもある。深部知覚障害も多く,麻痺に加えて,歩行障害を残す場合が多い。視力障害は神経症状が強い場合にその頻度を高めるようである。全盲になる場合もある。致命率に関しては種々の調査により異っているが5〜8%である。この他に膀胱直腸障害や脳神経症状をみる例もあり,再発,再燃もある。SMON調査研究協議会の報告によるとSMON患者の転帰,予後は図1のようである。
Copyright © 1970, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.