今月の表紙
SMONの脊髄標本
豊倉 康夫
1
1東大神経内科
pp.966
発行日 1969年9月10日
Published Date 1969/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202784
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SMONは原因不明あるいは本態不明の奇病であるとよくいわれる.しかし,臨床症状や病理組織学的所見については,かなりのところまではっきりしている.正確にいうならば,SMONのmorbid anatomy(神経系のどこがどういうふうにおかされるのか?)はよくわかっていて臨床症状ともよく対応するが,病変のpathogenesisやetiologyがまだ確認されていないのである.
表紙の写真は,SMON患者脊髄の髄鞘染色標本で1,2,3,4の順にそれぞれ,上部頸髄,胸髄,上部腰髄,中部腰髄を示してある.変化は脊髄の長神経索に対称性に認められ,後索は上にゆくにしたがい変性が強くかつ後索内側部(Goll索)に著明に現われるが,側索の変性は頸髄のレベルではあまりはっきりせず,下降するにしたがい変性が明らかとなる.つまり,長神経索のdistalほど変化が強いのである.軸索染色の標本でみると,以上の関係はいっそう明らかとなる,発症後比較的早期に死亡した例の脊髄では,髄鞘の脱落は軽度でありながら,軸索のほうにはかなり明瞭な変性を認めることもある.このような脊髄長神経索の病変は,SMONが多発性硬化症や散在性脳脊髄炎などの脱髄疾患の範疇にはいる病気ではけっしてないことを示している.代謝障害,欠亡状態,あるいは中毒などの際にみられるpseudosystemic degenerationに似た病変の局在と分布を示している.
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