Medical Topics
異食症(Pica)
吉村 裕之
1
1千葉大学医学部
pp.58-59
発行日 1970年4月10日
Published Date 1970/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204658
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はじめに
異食症は別名異味症ともいい正常時には口にしない物を特別嗜食する病的食嗜をさすものとされている。たとえば炭,紙,爪,白墨,はては土砂を食べることがあり,精神神経障碍,もしくは中毒症状に原因することが考えられる。ヒステリー症候の患者ではよく知られているが筆者らの専門とする寄生虫病の分野では蛔虫や(鉤虫十二指腸虫)の寄生時にしばしばみられる。農山村になお多い鉤虫(十二指腸虫)性の貧血のある感染者に随伴する一種の神経症状とも考えられている。
最近家庭ではペットとして犬,ネコなど小動物を飼育愛玩する傾向がとみにふえいろいろな問題を提供している。ここに人畜共通の寄生虫感染症が大きく注目されてきた。ことに子供とこれら愛玩動物の接触は知らずに,きわめて重大な疾病を起こすことが注意されなければならない。ここでは異食症を特異的症状とする子供の犬の蛔虫感染症をとりあげ多くの関心を喚起したい。
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