シンポジウム 公衆衛生を担う人びと
東京大学第42回五月祭より収録
保健活動の充実のために
大渡 順二
1
1保健同人社
pp.57-60
発行日 1968年9月10日
Published Date 1968/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204271
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ヒューマニズムの欠除
いまの医療の世界および公衆衛生の世界の一番の欠点はヒューマニズムがたりないことじゃないかと思うんです。医道の世界を一番純粋に展開できるのは公衆衛生だと思います。医学というものを広く公衆衛生も含めた意味でいえばまた別ですが,私はそうじゃなくて,公衆衛生は医学に片足をふまえながら片足は社会的なほうへ乗り出したものだと思います。そういうふうな観点からいきますと,公衆衛生こそは医道というものを最も純粋に展開していけるものじゃないかしら。そういう意味で公衆衛生というものは非常に大事な仕事ではないか。お医者さんの狭い意味の医学とか医療とかいうものは,とかく医道を忘れたりしてせまく閉じこもりがちなんですけど,それを,私は,むしろ医療,医学を包括した,もっと広い立場に公衆衛生を理解したいと思います。私は自分ではそう受け取っているわけです。
いま保健婦さんのお話しが出ましたけれど,日本の医療,医学の問題で一番恥部になっておりますのが無医村の問題です。この無医村の問題になると社会制度的にも医学的にも医療的にもすっかり見捨てられた恥部になってるわけです。これをどうして解決するかということなんです。これはきょうは無医村の問題がテーマじゃありませんから深入りするのは避けますけれど,一番いい例だと思って申し上げますが,無医村だったら,何でもかんでもいいからとにかく医者をかついでいこう。
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