ワンポイントアドバイス
伝票の充実について
菅野 治重
pp.219
発行日 1988年3月1日
Published Date 1988/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543204427
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患者の詳細な情報は,検査室にとって提出された検査の意味を理解するうえで必要です.検体のみから病状を予測するには限界があり,臨床サイドより詳しい情報を提供してほしいと思います.検査伝票は臨床と検査室を結ぶ重要な情報の伝達手段であり,利用法によっては大きな助けとなります.
学会活動を積極的に行っているような検査室の伝票は,臨床の情報をより多く獲得し,検査成績をより質の高いものとするための苦心の跡が見られます.特に細菌検査においては,現在の感染症はヒトに常在性の細菌が原因となる内因性感染が主であるため,検出菌が常在菌である場合は感染症起炎菌が単なる付着菌かの判定がつねに必要となります,また患者の感染防御能の状態により,感染症を惹起する菌種の範囲が異なってくるため,日和見感染症では弱毒菌でも慎重に対処する必要が生じます。また抗菌剤投与を受けている患者からは耐性菌が高率に検出されますが,耐性黄色ブドウ球菌などごく一部の菌を除き,抗菌剤に高度耐性を示す菌の多くは弱毒菌であり,検出されても治療の必要のない場合が多くあります。例えば,アンピシリン投与時に喀痰で高率に検出されるクレブシエラなどがそうです.このような場合に必要以上に同定検査や感受性検査を行うと,臨床医な過剰な治療を促す結果となります.
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