ニュース診断
小選挙区制への動き
戒能 通厚
1
1東京大学社会科学研究所
pp.57
発行日 1967年12月10日
Published Date 1967/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204080
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小選挙区制問題については,第5次選挙制度審議会では答申困難な状況にあるというのが,正直なところのようです。それにしても,グラーベン方式など,審議会の多数意見である「比例代表,小選挙区制併用」案すら無視する自民党案をもち出してき,「小選挙区制」への動きを逆に困難にしてしまった背景には,私たちの理解の遠くおよばないものがあるようです。結局のところ,今回も「小選挙区制」はやめてしまうつもりなのか,だとしたら私たちはこの問題を,案外大騒ぎしすぎたということになってしまうのか,じつのところ反対運動を続けてきた人たちには一種の「とまどい」すら感じられるようです。けれども,注意すべきことは,自民党政府は,それにもかかわらず,単純小選挙区制なら望むところであると考えていること,しかし自民党内でもこれによれば落選確実,また候補者にすらなれない現議員がかなりいることも事実であるということでしょう。党内の,いく人かの現職議員,次回こそと手ぐすねひいている前,元議員などを切り捨てても,自民党の政権安定のためにはやむなしとするのが,ほかならない自民党流の「政局安定論」であります。社会党,公明党,共産党などが,当面の敵であるより前に,自民党内でも,敵,味方はげしい争いがあることは意外な感じもしますが,そこにまたこの問題の本質的なものがひそんでいるようにも思われます。
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