メディカル・ハイライト
腸炎ビブリオ中毒
田中 恒男
1
1東京大学医学部保健学科
pp.58-59
発行日 1967年9月10日
Published Date 1967/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204025
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腸炎ビブリオ中毒は,毎年5月下旬から11月初旬までの間に発生しており,とくに7月下旬から9月上旬が最盛期だという。この理由は,海水中の腸炎ビブリオが,夏期高温時に特に増加するとされていることから,ほぼ推察される。
腸炎ビブリオ中毒が問題視されたのは,昭和25年10月21〜22日,大阪府下泉佐野,岸和田,および大阪市南部において原因不明食中毒の集団発生が見られたことから始まる。当時患者数272名,死亡20名におよぶ,かなり激しい食中毒で,原因食として推定されたシラスからと,解剖死体から発見された類コレラ菌様のグラム陰性菌が原因と思われた。この菌は,3〜4%の食塩の存在を好む特性があるため好塩菌と呼ばれるようになった。その後昭和30年8月20日,国立横浜病院における集団食中毒,昭和34年,駿河湾沿岸漁夫の原因不明中毒,さらに,鯨ベーコン事件など,多くの集団中毒の原因菌と見做されるに至り,厚生省も昭和36年以降「病原性好塩菌特別部会」を設けて,その対策にとり組み,また,昭和38年日本医学会総会における討議を経て,細菌名を"腸炎ビブリオ"と改称されたものである。
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