特集 グラフ特集臨床検査の基礎
細菌検査の基礎
腸炎ビブリオの検査
善養寺 浩
1
1都立衛生研究所
pp.97-102
発行日 1966年11月25日
Published Date 1966/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542916040
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腸炎ビブリオ(学名Vibrio Parahaemolyticus)は元来海棲菌であって,夏期海水温が高くなると急速に増殖し,魚介体に付着して陸揚げされ,生魚介類の喫食による腸炎の原因となる。この腸炎の年間患者数は,統計上はおよそ2万名程度であるが,散発患者を加えれば4万名に近い数となろう。この菌は伝染病菌ではなく,2次感染のみられない食中毒菌である。この菌による食中毒は,本菌が海水中で増殖している真夏をピークとして,6〜9月の問に多発する。しかし海水からは証明されなくなる冬のころになると発生はまったく認められない。
腸炎ビブリオは分類学上はビブリオ属に属し,コレラ菌とともにこの属のなかの重要な病原菌である。上の写真の電子顕微鏡像のごとく,一端一毛性のべん毛をもつかん菌で,コンマ状を呈さない点が異なる以外,形態的にはコレラ菌に酷似している。この菌と鑑別上問題となる菌に海水性のAeromonas,Pseudomonas, Comamonasなどがあるが,これらの菌は生物学的性状において一部差がみられるほか,通常形態的にはべん毛が2本以上認められる。
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