連載 実は日本生まれの発見・8
腸炎ビブリオ
柳原 格
1
,
本田 武司
2
1大阪府立母子保健総合医療センター研究所免疫部門
2一般財団法人阪大微生物病研究会
pp.1315
発行日 2013年8月10日
Published Date 2013/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402106951
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大阪大学微生物病研究所正面入り口の上にある細菌感染分野の歴代の教授室には,志賀潔先生から腸炎ビブリオの発見者である藤野恒三郎先生に送られた金色の色紙が掲げられていた.この色紙の下,多くの感染症研究者が鼓舞激励を受け育った.
敗戦後間もない社会不安のなかの1950年,大阪府南部で発生したシラス食中毒事件では,患者272人のうち20名が亡くなった.7名は,加熱後のシラスを食べて発症している.患者は食後2~6時間(一般的には12時間程度)で発症,激烈な腹痛,嘔吐,下痢,水様便,血便,脈拍やや頻数・細小,筋防衛は認めず,意識は最後まで明瞭,との記録がある.一方,同大学法医学の大村得三教授(当時)は,剖検所見として胃カタル症状,腸粘膜の著しい充血,回腸・空腸の軽度のびらん,脳の血管怒張,各臓器のうっ血,などを報告されている.
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