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予算案と健保法
戒能 道厚
1
1東京大学社会科学研究所
pp.57
発行日 1967年4月10日
Published Date 1967/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203910
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2月28日に出された,政府予算案は,相変らず総花的でただながめるだけではなんのこともないようにみえます。けれども,一般の新聞もいうように,これは「景気調整」を目的とした,一定の政策原理をうちに秘めるものなのです。特徴的なのは,いわゆる財政投融資計画の歳出高2兆4,000億円弱ですが,そのほかにも国債発行限度額として8,000億円という数字がみられます。物価の安定や減税などは,自民党の選挙公約のはずでしたが,5兆円をみごとに割る4兆9,984億円では「4兆円でもニクズキハヨイ」ですし,全体としてのインフレ財政では,物価高はなくなりもせず,減税など全く予想もできない数字です。そして事実「自粛した」坊厚生大臣は,3月8日の「社会保険審議会」の席上で,健康保険法を改正し,大巾な自己負担額の増加によって,予算面での,おくれを取り戻すと強い決意を示しています。今年度末に,政府管掌健康保険の累積赤字は約1,070億円となるようですが,この分を初診料300円,保険料1割引上げなどの"応急手当"で埋め,"医察制度の安定"をはかるのだそうです。このような事実をみても,政府の予算案には一方に厚く,他方に薄い,一定の政策原理があるとは思えないでしょうか。
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