連載 保健指導を科学する・1【新連載】
事例—家族計画指導の中から
安藤 テル子
1
1熊本県球摩郡多良木町役場
pp.73-76
発行日 1966年1月10日
Published Date 1966/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203551
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その1
「今晩ワー,この雨ン中じゃあ,来ならんどと思ったばってん」
にぎやかな挨拶とともに3人,5人と集まり出したのは,6月の相談日の夜8時過ぎである.生理カードを出し,ヒッソリと悩みを話すもの「いつものように組み合わせで1組」とだれはばからず大声で器具薬品を注文する者など,一人ずつの面接相談に17名がすんで隣の控室に去った後「今晩は」とそっとはいって来たのは,2カ月ごとに開いている家族計画相談日を3回欠席しているNさんである.整理中のカードから目を離し顔を上げると,ハッと驚くほどのやつれようで,赤ちゃけた髪の生えぎわは,白髪となり,まぶしそうにまばたいている目も,眼瞼炎を患い挨拶する口もとは浮き上がったような歯列に抜け歯がめだつ.
「いらっしゃい.久しぶりね」と笑いかけ,ことばを待っているけれども,
「ハイ」
といったまま遠くに座っている.
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