研究・報告
福島県下のいわゆる「一般女性」間のトリコモナス症
大川 知之
1
1福島医大・産婦人科
pp.58-63
発行日 1965年12月10日
Published Date 1965/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203528
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はしがき
トリコモナス症とはトリコモナス原虫が,主として腔内に寄生し,いわゆるトリコモナス腔炎を起こし,悪臭ある黄色帯下とそれに随伴する外陰部の掻痒感を訴えてくる疾患で,帯下疾患の中では最も執拗にして難治な疾患である.
最近では本症患者と接触する男性の尿性器へも感染(多くは無症状)が起こり,そしてふたたび女性への感染原となりうることがわかり,一種の性病としての考えで取り扱われる傾向にあり,病名も尿性器トリコモナス症の名で呼ばれるようになってきた.このトリコモナス症は従来より婦人の悩みの種ではあったが,重大な合併症も見られなかったことから,ややもすれば等閑視されたきらいもなくはなかった.しかし最近では婦人の帯下に対する関心も深まり,また一方,本症による病的帯下は既存の腔部びらんに対して病状を増悪させるばかりでなく,長期間の悪影響はひいては子宮ガンの発生をも憂慮させるのではないかとまでいわれてきており,急速に関心が深まりつつある現況である.
Copyright © 1965, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.