今月の臨床 妊産婦と薬物治療─EBM時代に対応した必須知識
Ⅱ.妊娠中の各種疾患と薬物治療
3.STDの治療と注意点
トリコモナス
関 博之
1
1埼玉医科大学総合医療センター産婦人科
pp.610-611
発行日 2005年4月10日
Published Date 2005/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100290
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1 診療の概要
腟トリコモナス(Trichomonas vaginalis)は5~30 mmの楕円形の虫体で,3~5本の鞭毛を有する鞭毛虫である.腟トリコモナスは腟内に寄生,繁殖してトリコモナス腟炎(trichomonal vaginitis)を起こすが,腟内だけでなく,バルトリン腺,子宮頸管,腟前庭,尿路,さらに男性の性器(前立腺,精路),泌尿器(尿道,膀胱)でも発見される.これらの間の相互移行が考えられるので,腟トリコモナス症(vaginal trichomoniasis)と呼ばれる.腟トリコモナスは代表的な性感染症(STD)の1つではあるが,女性の場合はこれ以外に便器,浴場,タオル,婦人科診療機器などからの感染もありうる.集団検診で得た細胞診標本におけるトリコモナスの感染率は0.4%前後1),腟炎症状で来院した患者におけるトリコモナス陽性率も0.4%2)であり,トリコモナスの感染率は0.4%前後とする報告が多い.
トリコモナス感染の特徴は,ほかのSTDより罹患年齢が高いこと,ほかのSTDの重複感染率が高いことが挙げられる3).自覚症状は臭気を伴う帯下の増量(しばしば泡沫を伴う)と外陰掻痒感,灼熱感である.他覚的には腟入口部,腟壁,子宮腟部の強い発赤を認める.さらに,性交痛,性交後の腟壁出血,尿道炎,膀胱炎症状を伴うこともある.腟トリコモナスを検出すれば診断は確定する.診断法には鏡検法と培養法がある(表1).
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