とりのこされて・4
3,000人の待機児童
pp.59
発行日 1965年3月10日
Published Date 1965/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203336
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がらんどうの6畳間.タタミの上に遊び古したキューピーとボール.いくらはっても破かれて,フスマは骨だらけ.そんな部屋の中でK君は口によだれ止めの布切れをくわえて歩きまわっている.13歳,ほんとなら中学2年生だ.だが生後半年めにわずらった脳膜炎のせいで「キャッキャッ」という声をあげることができるだけ.マヒで左手足が曲がったままの体も小学3年生程度.オシメを当て,3度の食事も両親か高校生の姉さんに口まで運んでもらう.
父親のYさん(42)は四国のある町で税理士をしていたが,昨年春K君を身障児施設に入れたい一念で会社員に転職,一家で東京に引越してきた.四国にも施設はあるが,「重すぎて手におえない」K君をあずかってくれるところはなかったからだ.
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