読者からの手紙
チョウチンに導かれた訪問
秋元 孝江
1
1岡山県衛生部医務課
pp.39
発行日 1965年2月10日
Published Date 1965/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203310
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午後11時過ぎ,一人住居の下宿の雨戸をトントンとたたく音がする.立ち上がりぎわに物指しを手にして戸を開ける.「保健婦さん.助けてやってくだせえー」と,年のころなら50歳前後,お人好しの気弱な感じの男性が首に巻いた手ぬぐいを取って腰をまげる.「お願げえです.死にそうです.」と手をのばす.はっとして,とっさに振りあげたのは75cmの物指し.顔がほてるが今さらもうかくしようもない.「すみません」物指しが足にさわらなければこんな思いをしないですんだのにと,冷汗が全身に吹き出てくる.
簡単に様子を聞きとり,医師から出された指示の書いてあるメモと七つ道具を受け取る.
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