--------------------
国産ポリオ生ワクチン第1号をめぐる問題点—反対運動のねらいと今後
久保 全雄
1
1新日本医師協会
pp.16-17
発行日 1964年5月10日
Published Date 1964/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203098
- 有料閲覧
- 文献概要
昨年2月,ポリオ生ワクチンの国産品の製造されることを耳にしたとき,子どもを小児マヒから守る運動をやっていた人びとは,この国産化をよろこんだ.それと同時に当時の西村厚生大臣に,その実施にあたっては拙速を排し,動物実験,対人少数安全試験,小地域ブイルドテスト,中地域,大地域テストと徐々に積み重ね,その安全性と効果性とを明らかにしてほしいと再三要求してきた.それに合わせて衛生研究所や,保健所の充実を計ることも申し入れてきた.
この要求は厚生省の「海外ポリオ対策研究調査団」の報告書の中にも,「すべての国が実施にあたつては,人体安全テストをしており,これをはぶいた国は一つもない」と書かれている.また量産化の第1号は,人体安全テストを行なうことが必要であるとWHOの勧告にもでていることである.がこれをわが国では無視してしまった.その結果は,新聞に報道されたわずかな資料だけでも,十数名の死亡者,7名以上のマヒ患者が接種後に発生した.しかもその死亡者の細菌学的,疫学的探究もせず,簡単に症状だけで,生ワクチン接種とは無関係と速断した.またマヒ患者に対しては,ポリオ,日脳その他マヒ性疾患の流行していない時季に,接種後に接種者から多くのマヒ患者がでた.それにもかかわらず,その結論をださないまま非科学的な強行実施をあえてした.カナダでは100万人に一人の発病者がでただけでも一時中止した.
Copyright © 1964, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.