書評
—村松達雄編—『乳幼児保健』
滝沢 正
1
1厚生省母子衛生課
pp.64
発行日 1963年5月10日
Published Date 1963/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202842
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母子衛生対策向上への意欲
日本医師会が新年早々乳幼児の栄養問題に関する委員会を設け,斯界の権威者を委員に委嘱して本格的にこの問題に取り組むことになった.医師会のあるべき姿に向ってこの最も基本的な問題に取り組もうというわけである.日本の乳幼児のためにまたわが国の公衆衛生活動の根本的な施設樹立のためにもまことに喜ばしいことで慶賀に耐えない.わが国の乳児死亡率がようやく先進国に追いついたことは喜ばしいことではあるが,依然として著しい地域差があり,その地域差はそのまま,幼児期以後の体位の地域差にも通じている.日本国民の体位の向上の基本をなす乳幼児問題は依然として今後の重要な課題である.
国民の関心はややもすると,問題児,非行児等の社会的事象に注目するあまり,足下の家庭における児童の健全育成の意欲に欠けるうらみがある.児童福祉法の理念もややそのうらみなしとしない.乳児期からの積極的体力増強,身体機能の健全育成は諸外国における最近の児童問題の焦点となっていると聞く.乳児期からの神経,身体両面の発育発達状況の把握の仕方など今後最も母子保健指導者がのぞんでいる方向ではないかと思われる.
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