私たちをささえるもの 手記
"村ぐるみ"の健康管理の日まで—農村・農家・農民のなかで
横山 孝子
1
1長野県佐久病院
pp.26-28
発行日 1963年1月10日
Published Date 1963/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202725
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「保健婦さん,高血圧になると誰でも神経がやられて,恐しい事を口走つたり,暴力を振うようになるものですか」35,6の主婦が,血圧を測り終つたとたんに真顔で,そんな事を質問して来た.村の公民館での検診の折である.本人の血圧は132/74mgで問題のない値.「どなたか悪いのですか」と聞くと「実はウチのお爺さん(舅)がずつと血圧は高かつたのだが近頃とくに変で,嫁の私にひどくあたるのです.私とお婆さんが仲よく仕事をしているととても不気嫌になつて,お婆さんに"嫁をいじめろ"と口汚なく言うのです.お婆さんが"嫁にはどこも悪い所は無いし,こんなに良くしてくれる嫁をいじめたら近所の人に笑われますよ"というと,"お前は嫁にまかれているのだ,今に動けなくなつてから捨てられるぞ"などと恐ろしいことをいい出すのです.先月もそんなことからお爺さんがお婆さんに暴力を振おうとしているので,私が中に入り"お婆さんを打つなら私をなぐつて下さい"と,お爺さんの前に身を投げ出すと,今後は急に"嫁とグルになつて俺を押えにかかる気だろう"とわめき出し,これを又人が来る毎に言いふらすので,自分一人が耐えていれば良いのだと思いながらも,つい情けなくて涙が出そうになります.
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