社会技術講座
グループ・ダイナミックスの応用(2)
杉 政孝
1
1立教大学社会学部
pp.65-67
発行日 1962年7月10日
Published Date 1962/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202617
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I.グループ・ダイナミックスの応用における基本的な考え方とその領域
これから2回にわたつて,前号で概説した一般的方法論の上に組み立てられるグループ・ダイナミックスの理論が,保健婦活動のどんな分野でどのように応用されるかを具体的に述べてゆく.
グループ・ダイナミックスは,比較的小さな集団とそのメンバーである個人のパースナリテイーや行動との相互依存関係に関する理論であるからそれを実際に応用するにあたつても,適用の対象となるべき問題の種類や,それが起こる領域には自づと一定の限界がある.まず問題の種類についていえば,純粋に個人的な問題で集団にかかわりのないことや,法律あるいは規則で定められている法定事項の実施は,原則としてグループ・ダイナミックスの適用対象となりにくい呈法定事項も理想的にいえば,強制的に否応なくやらせるのでなく,その意義を社会的に承知したうえで自発的に従うように仕向けるのが望ましく,その為にはグループ・ダイナミックスの手法は十分役立つが多忙な保健婦活動の中に含まれるすべての法定事項の実施にそれを期待することは無理であり,さしあたつては,対象となる人々が自由に決定し得るような事項に限定することになろう.換言すれば,強制はできないけれど望ましいものとして期待される行動や考え方がうけ容れられるように指導説得する場合に,グループ・ダイナミックスの方法はその成果を発揮するのである.
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