コンタクトレンズ(33)
熊谷岱蔵博士のこと
長谷川 泉
pp.39
発行日 1962年5月10日
Published Date 1962/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202571
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東北大名誉教授熊谷岱蔵博士がなくなられた.熊谷博士に最初にお会いしたのは戦時中だつたから,もう十数年前のことである.当時私は大学新聞の編集をしていたが,その編集の仕事で仙台へ行つた時にお会いしたのである.熊谷博士は当時東北大総長であつた.
その頃は,もう本土が敵の航空機にじゆうりんされていた.私は航空本部の人と高練(高等練習機)で羽田から仙台へ飛んだのだが,これが飛行機の乗りぞめであり,しかも空襲警報が解除になつた直後であるので,東京からは敵機が退却してしまつても,まだ敵機がどこかの空にはひそんでいるような気がして不安だつたことを,今でもはつきりおぼえている.冬だったし,高等練習機だとはいつても,練習機にはちがいないのだし,風防のすき間からは風が入つてくるというわけで,ずいぶん寒かつたおぼえがある.
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