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組織づくりと日曜亭主
K
pp.10
発行日 1962年2月10日
Published Date 1962/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202508
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私の住むO市は東京近県の中都市として,いまはやりのベッド・タウンに急速に変貌しつつある.2年前,家主の退職官吏のおじいさんが,7軒ばかりの家作をつくつた.2間に小さな庭がついたのが,東京のアパート一室並みの家賃,近所に商店街の無いのは不便であつたが,黒々とした土と青い畠,夜の満天の星など四囲の大気を十二分に味わえることが取柄であつた.
2年たつて,あたりは密集してきた.畠は宅地として,あれよあれよといううちに坪何千円が3倍4倍になり,連日,棟上げ式がひきもきらず,大工さんのモーターバイクや電気カンナの騒音で,静けさはたちさかれてしまつた.そうした中で,新年度から家賃の値上げが申しわたされてきた.周辺に建つ新しい借家なみにした上に,改めて権利金を徴収するという条件.元来はそう欲ばりでもなかつた家主なのが,最近の値上げブームに便乗すべしと誰かに入知恵されたらしい.
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