寄生虫屋が語るよもやま話・16
亭主元気で留守がいい—マンソン住血吸虫
太田 伸生
1,2
1鈴鹿医療科学大学保健衛生学部
2東京医科歯科大学
pp.676-677
発行日 2017年5月15日
Published Date 2017/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542201275
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テレビコマーシャル(CM)は世相を反映する鏡として,私は個人的には大変興味をもっている.世論の批判にさらされるものもあれば,ウイットに富んだものとして人々の心を和ませるものもある.某通信会社のCMでは犬を一家のお父さんに仕立てて哀れと笑いを誘う受け狙いであったのだろうが,私は1人のお父さんとして,個人的には不快である.一方で,某通販会社のライオンのかぶり物をした犬が出てくるCMはわが家の死んだ犬の面影がよぎって,みるたびに心が揺さぶられた.受け取り方はまさに人それぞれなのである.
そんな話題性に富んだCMのひとつに殺虫剤のメーカーによる“亭主元気で留守がいい”というものがあった.当時の生活スタイルはモーレツ会社員と専業主婦の構図で,女房連にとって亭主は働いて給料を稼ぐ一方で,家にいられるとうっとうしい.だからなるべく外にいてくれると気楽だという意図である.“留守がいい”というのは彼女たちの本音であるかもしれないが,亭主は元気でなくては困るというのも切実な本音であろう.専業主婦にとって亭主は金づるであるし,女性の自立がそれほど簡単ではなかった時代である.まあ,“風呂,めし,寝る”のワンフレーズ亭主が家庭でクダをまいていると邪魔だろうということは自分を振り返って想像に難くないので反省する気持ちがないわけではない.
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