産業衛生講座
新しい職業病
鈴木 継美
1
1東京大学公衆衛生学教室
pp.65-68
発行日 1961年12月10日
Published Date 1961/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202480
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I.はじめに
"新しい"職業病のことを紹介せよという編集部からの御言いつけで,簡単にはいそうですかと引き受けましたが,考えてみると"新しい"とは一体どんなことなのか,若干当惑せざるをえません.
最近話題になつているというほどの意味で"新しい"という言葉を解釈するならば,たとえばニトログリコール中毒,ベリリウム中毒,キーパンチャーの腱鞘炎,などをとりあげることができます.しかし"新しい"という言葉を,これまで報告のなかつた,まつたく誰も知らなかつたという意味にとるならば,話はだいぶ変つてきます.わが国における産業は周知のことですが,諸外国の新しい技術に依存している部分がかなり多く,そのため新しい技術の導入に伴なつて,新しく発生する職業病については,諸外国での経験ずみのものが多く,わが国においては"新しい"職業病であつても,国際的には珍らしくないということが多いのです.エピュート(またはアラールダイト)樹脂が接着剤として使用されるようになり,使用未経験者に皮膚炎が多発することが欧米で指摘されてから,数年たつてわが国ではじめて報告されたという事例などもその一つと言えましよう.
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