特集 事故を防ぐために
農村におこる事故
大橋 一雄
1
1労働科学研究所・農業労働研究室
pp.20-23
発行日 1961年8月10日
Published Date 1961/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202379
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I.農村における事故の考え方
『農村におこる事故』といつても,ここで取り上げるのは,農業労働に従事しているときにおこるものに限ることにしたい.ところが,農業労働に従事しているときにおこる事故は,工場あるいは炭鉱山などの一般産業の労働に従事していておこるそれのようには,原因を明らかにすることができないものが多い.それは一般産業の労働が普通雇主側が作つた施設の下で,雇主側と取りきめた時刻から時刻まで行なわれているに対して,現在の日本の農業では,そういうことはまず見られない点である.従つて前者には『こういう施設をすれば防げた』という事故が発生するし,事故防止のためにいろいろな手段を講ずることも,決して不可能ではない.
また,事故を労働災害であると考えるとき,農業の場合には農薬で中毒したようなことを,職業病として取り扱うか,災害として取り扱うかは,一つの問題である.さらに,災害と考えるか,災難と考えるかも一つの問題である.そして農業における労働災害はきわめて多いにもかかわらず,それが工場や鉱山などの事業場でおこる場合のように,社会的な問題とならないことは,また考えて見なければならないことである.
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