随想
保健婦さんへ
田波 幸男
1
1厚生省保健所
pp.46-47
発行日 1961年7月10日
Published Date 1961/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202366
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話し合いの場の雰囲気は,なごやかでなければならない.そうでなければ会議は踊るばかりで,利害を異にし,主議主張の違う人がたがいに歩み寄つて,ひとつの結論を出すことはできない.なごやかに食事などしながら,胸襟をひらいて語り合うことが大切である.
商売柄,私共はいろいろな会議や会合に列席する機会が多い方ではないかと思うのであるが,そこで感ずることは,最近はその雰囲気が随分なごやかになつて来たことである.誰もあまり興奮しなくなつたし,悲憤慷慨の大講演をきくことも少なくなつたようである.日本人はユーモアの少ない国民だそうであるが,その乏しいといわれるユーモラスな気分も,すこしはただようようにもなつて来た.どうしてこのようになつたのか,それにはさまざまの原因もあることであろうが,まことに結構なことと言わざるを得ない.終戦直後は誰もかれもが腹がへつていたので,やたらにイライラして,ふだんなら笑つてきき流すようなことにも怒り心頭に発するというようなことになるし,第一話をする方もトゲトゲしい言い方になるものだから大変なさわぎになることが多かつたし,話もさつぱりまとまらなかつた.何しろ腹のへるということはいけないことで,人間も動物であることを痛感するのはそういうときである.
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